日本を代表する写真家が撮った、オリジナルプリントが手に入る
写真家列伝 | Photographer biography

第14回水野克比古 桜編

「花の都」と称えられる京都で
とっておきの桜を写す
水野克比古 オリジナルプリント 哲学の道

前回の「紅葉編」に続いて、京都の春の彩り、「桜」について。 ソメイヨシノ以外にも多くの桜が咲くため比較的長い期間楽しめるのも京都の魅力だと水野先生は語ります。

京都に生まれ、町家に暮らし、京都の四季の移ろいを丹念に撮影する水野克比古。水野が桜を撮り始めたのは1970年。以来毎年、春になれば寺社の境内や路地など、京都の桜めぐりを続けている。

「大阪万博の開会直前に、万博本の仕事を受けた私は、パビリオン撮影のために京都の実家から千里まで、一時的に通っていました。撮り終わると京都は桜の季節。当時使い始めたカラーフィルムには最適の題材でした。そのまま東京に帰ることなく、45年以上も桜を撮っています」

京都では、3月の半ばから4月の終わりまで、どこかで桜をたのしむことができる。暖かな洛南から寒い洛北まで京都盆地周辺は気候が異なるため、開花の時期に差がある。さらに、ソメイヨシノ以外にも、山桜や、かつて日本各地から取り寄せられた様々な桜が、戦災で焼かれることもなく今まで大切に保存されてきたため、種類によっても時期がずれるのだ。
「桜の花には白いのもあれば微妙に赤いものもあります。山桜は葉と同時に花が咲き、花に隙間があります。遠目に見ると、葉の色によって白い花に変化して見えるのです。ソメイヨシノだけだと一気に花が散りますが、様々な桜が咲いている京都では、咲きはじめも散るのも別々。桜は多様性の象徴でもあるのです」

水野克比古 | オリジナルプリント
水野克比古 オリジナルプリント 桜散る祇園白川のほとり
桜散る祇園白川のほとり

「花の都」とうたわれる京都。それは桜の花のように美しい都、という意味だ。桜が崖地や堤防に植えられてきたのは、水はけのよい土地を好み、根を強く張る特徴があるからだ。地盤強化のために先人たちは竹や桜を植え、それを今、私たちが愛でている。
「最近は、植え替えるときはソメイヨシノ以外が使われることが多いようですね。近年大流行しているのは、八重の紅しだれです。京都では絶えていたのですが、平安神宮創建の際に移植されました。社殿の朱色に映えます。谷崎潤一郎が『細雪』で激賞し、生前建てた自分の墓に植えたほどです」

水野克比古 | オリジナルプリント
水野克比古 オリジナルプリント 平安神宮
平安神宮

水野が選んだ珠玉の桜から、さらにおすすめの場所を聞いた。
「平安神宮から数百メートルの距離にある金戒光明寺へとはしごしたらどうでしょう。松平容保や新撰組、お江の方など徳川家と縁の深かかった金戒光明寺は最近、注目されています。しかし、京都はどこを歩いても桜があります(笑)」

実際に訪れるもよし、美しいプリントで楽しむもよし。日本の春に、桜は欠かせない存在だ。

PROFILE

■水野克比古(みずの かつひこ)
1941年京都生まれ。
京都をテーマにした写真集を多数出版する「京都写真」の第一人者。日本の伝統文化を深く見つめ、1969年から風景、庭園、建築など京都の風物を題材とした撮影に取り組んでいる。その作品は国内はもとより、「美しい京都を撮る写真家」として海外での評価が高い。京都・西陣の町屋を改造した“写真館”を所有。内部の見学もできる。
日本写真家協会会員、日本写真芸術学会会員。
2015年「京都府文化賞」功労賞を受賞。


オリジナルプリントとは?

EXHIBITION INFORMATION

  • 高砂淳二 写真展「祝福の瞬間 ~Blessing from the Universe」
    11/3(土)~11/15(木)
    GINZA OKAMI(東京)
    トークイベントあり
  • 水越武 写真展「MY SENSE OF WONDER 前期『水の音』」
    11/6(火)~11/17(土)
    コミュニケーションギャラリーふげん社(東京)
    ギャラリートーク+パーティーあり
  • 広田尚敬、木之下晃、前田真三、中村征夫、水越武、竹内敏信、野町和嘉 写真展示「フジフイルム・フォトコレクション展 日本の写真史を飾った101人の写真家たち」
    10/27(土)~11/28(日)
    ギャラリーみつけ(新潟)
  • 水越武 写真展「MY SENSE OF WONDER 後期『光の音』」
    11/20(火)~12/1(土)
    コミュニケーションギャラリーふげん社(東京)