写真家列伝

第11回 吉村和敏

夜明けから日没まで、地球を照らす美しい光を追う

「光をテーマに旅をするのが、僕の世界旅行なんです」と吉村和敏(よしむらかずとし)は語る。地球を旅し続ける中で、その目は常に光を意識しているという。

『BLUE MOMENT』『MAGIC HOUR』『MORNING LIGHT』の三部作は、時間ごとに異なる光を写した写真集だ。

よく晴れた日の日没後、夜の闇が訪れる直前に、空に青い残照が広がる時間を、北欧ではブルーモーメントと呼ぶ。昼と夜の境目、まるで時間が止まったかのような世界に吉村は魅せられていった。

それに対して、マジックアワーは、太陽が沈み、空に一番星が現れるまでの30分。ブルーモーメントの少し前。ピンクやパーブルの淡い光に包まれ、影がなくなり、世界が最も美しく見える時間と言われている。

吉村和敏 | オリジナルプリント

ディナン(265)

「映像に携わる人間にとって、風景も人物も美しく撮れる、特別な時間帯なんです。自分も、その魔法のような時間に魅了された一人ですね」
そうして夕暮れ時の2つの作品を発表した吉村が次に考えたのは、当然朝だった。

「朝はシャキッとして、太陽が白さを持っています。一日のうちで朝が一番美しい。日中は全然ダメ(笑)。夕暮れ時の色彩はリッチで風景はドラマチックになりますが、別な言い方をすれば重い」

吉村和敏 | オリジナルプリント

トルヒーリョ(944)

朝の光を撮る中で大事にしたのは人間の生活感。人々が動き出す朝の時間、国や地域によって変わるさまざまな朝の風景をドキュメンタリーのように追いかけながら、美しさを探していった。
だれでも1、2枚ならその場でいい写真が撮れるデジカメ時代の中で、吉村が大事にしているのはテーマだ。「写真家にとって、テーマを見つけることが仕事のかなり大きな部分です。ぼくの場合は、美しさの基準をどこに置くかで、テーマが生まれてきます」

光そのものは写すことができない。だから吉村は、光が木や水や建物にどう当たっているか、その瞬間を切りとることで、温かさやまぶしさを表現する。吉村にとって、風景は光を写す鏡のような存在でもある。

一日のうち、わずかな時間だけ現れる「光」の風景。きっとそこに、吉村が見いだした美しさがあるはずだ。

PROFILE

■吉村和敏(よしむら かずとし)
1967年 長野県生まれ。
高校卒業後、東京の印刷会社で働く。退社後、1年間のカナダ暮らしをきっかけに、写真家としてデビュー。以後、20年間、1年間のうち約半年をカナダやヨーロッパ各国のカントリー・サイドで生活し、精力的に撮影活動を続けている。全国各地に数多くのファンを持ち、個展が開催されると遠方から訪れる人も。また、作品集が数多く出版されており、こちらも人気が高い。